50歳過ぎた人が求人に応募してきた。
「やってもらおうとする職種の経験が短いようなので不安があるがどうすれば・・・」
キャリアアップ助成金の人材育成コースを使って訓練してみてはどうでしょう。
重要ポイント 高齢も可! キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金の対象者に、年齢の制限はない。
50歳代であっても、直近5年以内で3年以上の正社員経験がなければ助成金の対象になる。
キャリアアップ助成金の対象は若者ではない
キャリアアップ助成金の有期実習型訓練を行ったことで受給できる助成金の考え方や提出書類は、すでに廃止された若者チャレンジ奨励金によく似ています。
非正規の若者(35歳未満)を対象としていたのが若者チャレンジ奨励金でしたが、キャリアアップ助成金の対象は有期契約労働者や短時間労働者など非正規労働者です。
正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などを実施した事業主に対して助成するもので対象者を年齢で制限していません。
解雇があると助成金は制限される
雇用関係の助成金の多くは解雇があるともらえません。
キャリアアップ助成金の人材育成コースを申請する場合、「職業訓練計画届」を提出した日の前日から起算して6カ月前の日から当該訓練に係るキャリアアップ助成金の支給申請書の提出日までの間に、雇用保険被保険者を解雇などしていないことが要件になります。
退職勧奨は退職を勧めることであって、解雇(事業主からの一方的な意思表示による労働契約の終了)とは違います。退職を勧められても退職しない自由があるのが退職勧奨だからです。解雇について労働基準法は予告手当の支払いなどを求めて労働者保護を図っていますが、退職勧奨について制限はありません。
ところが雇用保険では退職勧奨も解雇と同様に扱います。退職勧奨は事業主からの働きかけがあったことによる退職と考えられ、退職勧奨があると助成金は受給できなくなります。
ただし、犯罪を犯したなど本人の責めに帰すべき理由がある解雇は、助成金の受給に影響しません。
有期実習型訓練をするには有期の雇用契約を結ぶ
雇用契約を結ぶとき(採用時)には、労働条件を書面で明示しなければなりません。
労働条件というとまず給与がどうか、休みは多いかが気になるところですが、まず確認すべきこととして挙げられていることは期間の定めの有無です。有期雇用とはいつまでと期間を定めて雇用するという約束ですし、正規雇用とは期間の定めのない雇用契約です。
労働条件を書面で明示せずに雇用しているというケースがありますが、助成金の受給に当たっては、労働条件の通知書か、雇用契約書のコピーを求められます。
雇用契約書や労働条件通知書には始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項を書きいれますが、後日訓練を行った日時や時間帯が、契約内容と矛盾がないかチェックを受けることを意識して作成しておく必要があります。
雇用保険の資格取得届は・・・
有期契約労働者で雇用保険の資格取得手続きをするときには、氏名や資格取得年月日のほか、雇用形態を記すところがあります。雇用形態とは派遣、パートタイム、有期契約労働者、その他などの区分のことですが、有期実習型訓練を受ける人は有期契約労働者になっていなければなりません。
有期実習型訓練の意図
期間の定めのある雇用契約の人は、契約社員とか準社員などと呼ばれているのではないでしょうか。正社員が長期で働ける保証の下、教育訓練の機会に恵まれ、キャリア形成がしやすいのに比べ、6カ月や1年などの期間を定めた契約の有期契約社員は、ルーチンワークが与えられることが多く、キャリアを形成しにくいと考えられています。
有期実習型訓練の助成金の意図の一つは、社会人としての基礎的な教育訓練をOff-JT(通常の業務の場所を離れて行う座学)で身につけることにあります。挨拶などの基礎的なビジネスマナーから人間関係を良くするためのコミュニケーション研修などは職種にかかわらず賃金助成の対象です。
社外の○○スクールでパソコンの基礎講習を受けることも対象になります。
経費助成といって、外部研修機関に支払った費用も助成されますから、高額でなければタダで研修が受けられます(小野本事務所では職業能力基礎研修として、社会保険のしくみ、労働・安全衛生法の基礎知識などの研修を実施し、ご好評をいただいています)。
訓練計画の作成は人材育成につながる
実務(実習)を通して行う職業訓練をOJTといいます。
基礎的な技能の実習にX時間で、その研修担当は○年前入社の○○さん、機械操作の実習にY時間で担当は係長など訓練計画を練り、社員が教える側になることも有意義なことです。訓練計画の作成・OJTの実施は既存の社員の育成に生かすことができます。
訓練の受講者はその記録を求められますが、実習の記録は教育効果を高めます。
職業訓練の期間と内容
有期実習型訓練は、実施期間が3か月から6カ月の間であることと、総訓練時間が6カ月当たりの時間数に換算して425時間以上でなければなりません。
総訓練時間に占めるOJTの割合は1割以上9割以下にする必要があります。
ジョブ・カードとは
ジョブ・カードとは研修生が自分の能力や職業意識を整理し、資格やPRポイントを記載した書類で、①履歴シート、②職務経歴シート、③キャリアシート、④評価シートから成り、訓練開始前に登録キャリア・コンサルタントと相談しながら①②③を作成します。④の評価シートは、訓練終了後に行う評価項目を記載したものです。
まとめ(詳細は厚労省のHPで確認を)
中途採用をするとき有期の雇用とするのなら・・・
キャリアアップ助成金を活用して、教育訓練する⇒教育訓練した時間の賃金助成と経費助成がある。
適正があれば、正社員に登用する⇒登用後、6カ月で50万円がもらえる。
社員教育は企業の成長に欠かせません。
助成金も活用しましょう。
その他の記事
ト ピ ッ ク ス マイナンバーが10月に通知されます
今年の10月にすべての国民にマイナンバー(個人番号)が通知されることが決まっている。行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会を実現する社会基盤の実現のためという。
番号制度というと、住基ネット(住民票コード)を想起される方も多いと思う。
住基ネットは、総務省管轄の住民基本台帳法の改正に基づくもので、番号の取り扱いが中途半端であった。住民基本台帳は、自治体が住民サービスをするための台帳である。
マイナンバー法は、各省庁を横断する組織である内閣府が所管し、番号制度を行政手続きの基礎とすることを定めている。
自治体が行う番号の通知・番号カードの交付に関する事務は、法定受託事務(本来国が果たすべき役割の事務)となっている。個人番号の利用は、社会保障(年金分野・労働分野・福祉医療)、税、災害対策に限られるとしている。 番号法で変更となる書式案もネットで確認できる。
シリーズ 労働関係の言葉
~ 10人以上の事業所とは? ~
労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する事業所に就業規則の届け出を義務付けています(第89条)。
パートタイマーもこの10人に入ります。
ある健康教室で、週2回、1日2時間程度働くトレーナーは雇用保険にも加入しない短時間の労働者ですが、この関係では「常時」使用する労働者に数えます。
【スタッフからひとこと】 「休みの日に年休は取得できません」
ある会社の退職者の出勤簿を見たら1か月間の31日すべて年次有給休暇となっていました。
年次有給休暇は所定労働日にしか消化できません。31日全部が所定労働日ということはあり得ません。
土日がもともと休みなら、土日を年休にすることは、出来ません。働かなければならない日に有給で休めるのが年次有給休暇だからです。
【メンタル疾患を生まない職場の作り方 】研修 業務日記 1月21日
総合教育研究所の石橋先生と共催でセミナーを開催
社労士の立場から私は、精神疾患で労災申請する人が増え続続けている現状を話しました。メンタル疾患で会社を休む人が出た場合に困らない規定、具体的な対応を説明しました。
石橋先生からは、ふだんから前向きな気持ちを持って、時には弱い自分もさらけ出せる職場であれば、心身共に健康でいられる、それには・・・とグルーブ討議も交えて説得力ある話をしていただきました。
「判例の分析がわかりやすかった。」「人生観が変わるようなお話を聞き、大変勉強になりました。」(アンケートから)