「75歳になるのですが、医療保険はどうなるのでしょう。
働いているので医療機関にかかったときは3割負担になるのでしょうか。」
重要ポイント
75歳になるとどのような人も後期高齢者医療保険に加入します。被用者であった場合は健康保険被保険者証を保険者に返納して市町村から発行される(手続き不要。郵送されて届く)保険証を使います。医療機関にかかったとき、現役並み所得者は3割、原則的には1割の医療費を負担します。保険料は個人単位で賦課され、原則年金から天引きされます。
皆保険の意味
「市町村又は特別区の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする」(国民健康保険法第5条)国民の健康保険のキマリです。すべての国民を住所地の国民健康保険の対象とすると規定されています。その上で、被用者保険に加入する者や生活保護受給者は適用を除外するという仕組みになっています。
「どの医療保険制度にも入っていないが、病気のときは全額払う」このようなことは、制度上認められていません。
医療保険の制度は大きく3つ
医療保険制度には被用者保険と国民健康保険、さらに75歳以上が加入する後期高齢者医療制度があります。
2008年から75歳になるとすべての人は後期高齢者医療制度に加入することになりました。
被用者保険の種類
被用者保険は組合健保、協会けんぽ、各種共済保険と大きく3種類あります。
組合健保とは組合管掌健康保険のことです。規模の大きな会社や同業種の会社が集まって作った医療保険を運営する組織です。
厚生労働大臣の許可を得ている組織です。
協会けんぽは全国健康保険協会の略称で、 2008年10月に全国健康保険協会が設立され、民間組織として都道府県ごとに支部が置かれ保険が運営されています。
公務員やその家族は、国家公務員であれば国家公務員共済組合、地方公務員であれば各種地方公務員共済組合に加入します。私立学校には私学共済という 医療保険もあります。
国民健康保険の種類
国民健康保険は市町村が保険者となっている市町村国保と国保組合とがあります。
自営業や無職の人たち(被用者国保に加入しない人)は国保に加入します。
医師や建設土木関係者等が同業種で組合をつくって医療保険制度を運営しています。
年齢による給付率の違い
被用者保険でも国保でも医療機関を受診すると自己負担3割ですみます。70歳から74歳は原則2割、75歳以上は原則1割負担です。現役並みの所得があると70歳以上になっても3割の負担です。
被用者保険の保険料
被用者保険の加入者は加入者である被保険者と家族のための給付に充てられる保険料(基本保険料)と後期高齢者の支援金等に充てられる保険料(特定保険料)を合わせて一般保険料として負担しています。
新潟県の協会けんぽの健康保険料率は9.79%ですが、内訳は基本保険料率が6.3%、特定保険料率が3.67%です。健康保険料の37%が後期高齢者を支援するために充てられているのです。組合健保も同様に後期高齢者支援の負担をしています。
国民健康保険の保険料
国民健康保険の保険料は市町村により異なりますが、加入者の前年の所得をもとに、世帯単位で計算され、世帯主が納付義務者となります。
国民健康保険料も医療分保険料に加え、後期高齢者医療制度支援のための支援分保険料を負担します。
国保の計算は複雑ですが、応能負担(所得割と資産割)、応益負担(均等割と世帯別平等割)の合計が保険料となります。
国民健康保険は税金か
市町村によっては国民健康保険を国民健康保険税として徴収しています。保険料か保険税かは市町村が決めてよいことになっています。
国民健康保険料として徴収する場合は時効が 2年、保険税として徴収する場合は時効が5年という違いがあります。
後期高齢者の保険料
国内に居住する75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)のすべての方が後期高齢者医療保険の加入となります。後期高齢者医療制度は都道府県ごとに市区町村が加入する広域連合が主体となって運営していますが、その取り扱いの窓口は市区町村です。
保険料は世帯単位ではなく被保険者一人一人(個人単位)で、徴収されます。
後期高齢者医療制度の保険料は均等割と所得割の二つの要素から成り、運営主体である広域連合が保険料を決めます。
後期高齢者の保険料は、原則、年金から天引きされるという方法で納めます。
後期高齢者と被扶養者
ずーと75歳まで被用者保険に加入してきた方に被扶養配偶者がいたとします。
夫が被用者保険から後期高齢者医療保険制度に移行した場合、年下の妻はどの医療保険制度に加入するのでしょうか。
被保険者が75歳になり後期高齢者医療制度に移行すると、75歳未満の被扶養者がいる場合、被扶養者は資格を喪失しますので、国民健康保険等への加入手続きが必要となります。
後期高齢者医療の財源
医療保険は「保険」制度ですが、公費負担を受けて財源が成り立っています。
協会けんぽの保険給付費の16.4%は国が補助しています。
国保では保険給付費の5割が公費(国庫負担41%、都道府県9%)です。
後期高齢者医療制度では公費が5割、被用者保険・国民健康保険からの支援金が4割、被保険者(後期高齢者)の保険料部分は約1 割となっています。
高齢者の医療費を国、地方公共団体、各医療保険者が共同で負担するしくみは、1983年の老人保健法から続いているものです。
高齢者の増加と医療保険の高騰
10月26日、総務省の国勢調査の数字が発表になりました。それによると、75歳以上の人口は1612万人と総人口の「8人に1人」を占め、14歳以下の子どもの数を上回ったといいます。これからますます75歳以上の高齢者は増え、医療費を高騰させることは確実です。
参考「医療を問い直すー国民皆保険の将来」島崎謙治 ちくま新書、「国民健康保険」有期康博 岩波ブックレットほか
ト ピ ッ ク ス 65歳超雇用推進助成金 平成28年10月19日から
65歳超雇用推進助成金がいよいよスタートしました。
新しい制度を平成28年10月19日以降において実施すると、下表のように助成金が支給されます。
65歳への 定年引上げ |
66歳以上への定年引上げ または定年の定めの廃止 |
希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入 | |
66歳から69歳 | 70歳以上 | ||
100万円 | 120万円 | 60万円 | 80万円 |
注意点は、〇 制度を規定した就業規則等を整備していること。
〇 制度を規定した際に経費(就業規則等の作成に係る委託費、就業規則等の見直しにあたってのコンサルタント費用等の社外の専門家に支出した費用に限る)を要しているいることなど。
詳細は(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構のパンフレットでご確認ください。
(又は弊所にお問い合わせください)
労務のことば ~完全歩合給の注意点~
「新たに作るサービス部門で、完全な歩合給でお給料を払ってもいいものでしょうか」売上高に応じた給与を支払うことは認められていますが、「労働時間に応じ一定額の賃金の補償をしなければならない」(労基法27 条)ですから、8時間の労働時間で最低賃金は支払う約束をしたのであれば、売上げがゼロでも《最低賃金(時給)×8時間》の賃金は支払わなければなりません。
【スタッフからひとこと】 退職(失業)すると
国民年金が免除になる場合があります!
退職して無収入となっても国民年金の第1 号被保険者として月額16,260円もの保険料を支払わなければなりません。
退職後、離職票を持って国民年金の免除申請を行うと、本人の所得状況を除外して審査が行われ保険料が免除になる場合があります。(特例免除制度)この特例免除制度には、退職理由、雇用期間は、問われません
。退職後加入する国民健康保険は、退職理由が、本人の意思でなく失業の場合に保険料の軽減措置がとられています。
【 業務災害ゼロを体得する研修】 業務日誌 10月○日
「本当に良かったです!みんなで考えることができました。法人になって1年、初めての研修でした。みんな楽しく意見を出し合っていました。ありがとうございました」このような言葉を研修後に頂けたときは、心から嬉しく思います。
講義方式でする研修もありますが、経営者の依頼によっては、受講者一人一人の意見を付箋やカードに書きだしてもらって、課題を解決したり価値観を共有したりする研修をします。
今回は建設関連の、若い従業員が急に増えた会社でした。まずは災害のない安全な職場にしたいという経営者の方の強い思いを受けて研修をしました。はじめに経営者からお話していただきました。会社設立の苦労した話から従業員への感謝の言葉もあり、心に響きました。このような機会は今までなかったそうです。
私はその業界の災害の状況を講義、災害防止のヒントを話しました。その後は、カードを使っての個人作業、グループでのワークとすすめました。 書類を書くようなことが業務ではない参加者が、どのように研修に係わってくれるのか、心配しながら臨みましたが、思いのほか熱心に和気あいあいと取り組んでいただき災害ゼロへの行動が確認できました。明日からの業務に活かしてほしいです。