副業を認めますか?

★★ 副業を認めますか? ★★

「従業員から「副業を認めてほしい」と言われたがどうすれば?」

私生活の自由な時間の使い方を制限することはできないという考え方もあり
ますが、多くの会社では原則として正社員の副業・兼業を認めていないと思い
ます。

政府は働き方改革の一環として、副業・兼業を積極的に認めていく方向のよ
うです。

副業は認めるのがよいのでしょうか。
■ 重要ポイント─────────────────────────

働き方改革の動きの中で、副業・兼業を推進しようとする動きがある。

副業を認め、成果を上げている会社もある。
■ 就業規則と副業の禁止 ─────────────────────────

就業規則の服務規律のところで、許可のない副業・兼業を禁止している会社は
多いと思います。

「会社の許可なく、他の会社の従業員として労働契約を結んではならない」

「事前に許可を受けなければ他の職に就いてはならない」

「会社の許可なく社外の業務に従事し又は自ら事業を行ってはならない」

などが規定例として考えられます。
■ 副業・兼業禁止の意味 ─────────────────────────

副業・兼業を無制限に認めると、本業に差し障りが出る場合が出てきます。

副業の会社の労働時間と合わせると長時間労働の可能性が高まります。

正規の事務職員が勤務時間終了後6時間にわたって他社就労していた事案で、
労務の誠実な提供に支障をきたす蓋然性が高いとして兼業禁止規定が認められ、
「兼業を就業規則で制限することは合理的である」とされた判例があります。
■ 副業・兼業と時間外割増手当の支払い ──────────────────

「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適
用については通算する。」(労働基準法第38条1項)となっています。

A社で8時間働き、退社後B社で2時間働いた場合、労働時間は通算され、B社は
割増賃金を支払わなければならなくなります。

兼業・副業を認める場合には、割増賃金の支払義務の問題がありうることを考
えておく必要があります。
■ 複数就労者の通勤災害 ─────────────────────────

住居と就業の場所の間を往復中に発生した災害は「通勤災害」となり、労災保
険の適用があります。

自宅からA社に向かうとき、B社から自宅に戻るとき、さらにはA社から第2の就
労先であるB社に向かうときも、「通勤」となります。

就業規則で副業・兼業の禁止をしていても、通勤災害の要件を満たせば、「通
勤災害」として取り扱われます。
■ 認めてはならない副業・兼業 ───────────────────────

副業・兼業の禁止規定が有効であるのは、次のような場合と考えられます。

(1)会社の社会的信用や名誉を侵害するような就労
バーや風俗店など違法行為が行われている場所でのアルバイト

(2)競業会社での就労
企業秘密・営業機密漏えいの防止のため

(3)本業に支障を生じさせるような就労
夜間の長時間にわたるような就労
週1回の休日が確保できないような日の就労

上記のような副業・兼業が行われた場合には、会社の懲戒の対象となると
規定しておく必要があります。

(従業員の副業禁止規定の有効性については
「懲戒権行使の法律実務」中央経済社)
■ 副業・兼業推進の動き ─────────────────────────

「働き方改革実行計画(案)」(平成29年3月28日、働き方改革実現会議決定)
では、柔軟な働き方がしやすい環境整備の一つとして、副業・兼業の推進をあ
げています。

「諸外国では副業・兼業を通じた起業が開業率の向上にも寄与しており、新た
な技術の開発、オープンイノベーション、起業の手段や第2の人生の準備とし
ても有効である。
(略)副業・兼業を通じた創業・新事業の創出に関する好事例の横展開を図る。
その際、長時間労働を招かないよう、労働時間管理の在り方等についても整理
する」と今後の対応の方向性を考えています。

指標では2027年度以降、「希望者は原則として副業・兼業を行うことができる
社会にする。」となっています。
■ 柔軟な働き方への転換 ─────────────────────────

副業・兼業を積極的に認めている会社があります。

株式会社クラウドワークスは2011年創業、従業員数134名のクラウドソー
シングをしている会社ですが、正社員の1割が個人事業主として副業を実践、
副業で得た知見を自社サービス改善に反映、生産性向上にもなっているといい
ます。

サイボウズ株式会社では、「会社の資産(モノ、カネ、情報、勤務時間、
ブランド等)を毀損する可能性のある場合を除き、副業を行うことができる」
として副業を解禁しました。労働時間を減らして本業の成果が変わらないか?
情報漏えい・企業ブランド毀損が起きないか?シナジーがある副業をどちらで
評価するか?といった効果については未知数で不安としながらも、社外の知識
を取り込む、ぶら下がり社員を減らす、働き方の多様化を促進できるとそのメ
リットをあげています。

株式会社ドンキホーテでは、フルタイム有期雇用社員から、同店の事業所
内保育施設でも勤務したいと要望があり、応えるかたちで副業を認めています。
兼業により従業員が過重労働とならないよう、兼業先との間で従業員の健康管
理等に関する覚書を締結、本業・副業双方での労働時間管理、健康配慮等もし
て副業社員をサポートしているといいます。

(「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集 平成29年5月」中小企業庁)
■ 副業・兼業のルール ─────────────────────────

副業・兼業を希望する社員には「副業・兼業許可申請書」により、隠さず申請
してもらい、理由を確認しましょう。

副業・兼業先の会社が競合会社だということはないでしょうか。

就労する時間はいつで、何時間くらいでしょう。本業の労働時間と合わせて、
長すぎる労働時間にならない範囲で認めることになります。

本業の繁忙期で時間外労働があるような時期は認めないということになるでし
ょう。
入社して間もない方、一定の役職にある方について制限するかどうかも会社と
して検討の余地があると思います。
許可については1年などの有効期間を設けて、その都度判断するとしておくの
がよいでしょう。

■ 健康確保をどうするか ─────────────────────────

副業・兼業の推進の動きのなかにあっても、副業・兼業者の労働時間や健康を
どのように管理すべきかは課題で、ガイドラインが今年度中に策定されるよう
です。過重労働対策が叫ばれる一方で、副業・兼業者が増え、ひとりひとりの
総労働時間が増加し、健康を害することになっては問題です。