健保組合は大丈夫?

★★ 健保組合は大丈夫? ★★

「健保組合2割『解散予備軍』」と4月23日の日本経済新聞の一面で報じられ
ました。

大企業の多くが加入し、安定しているはずの健保組合で何が起きているのでし
ょう。

■ 重要ポイント ────────────────────────

健保組合は高齢者医療費の負担が重いことが原因で、財政が悪化している。健
保組合が解散すると、協会けんぽに加入することになり、税金の負担も増える。

■ 民間の被用者保険は2種類 ────────────────────────

企業に勤める人とその家族が加入する医療保険制度には、健康保険組合(健
保組合)と、全国健康保険協会(協会けんぽ)があります。制度の加入者数は、
健保組合が2,914万人、協会けんぽは3,716万人です。

健保組合は、厚生労働大臣の認可を受けて設立された公法人で1,389ありま
す。
協会けんぽは政府管掌の保険、健康保険組合は、組合管掌の保険です。

■ 健保組合の要件 ────────────────────────

健康保険組合には、企業が単独で設立する単一型健康保険組合(被保険者要件
は常時700人以上)と、同業種の複数の企業が共同で設立する形式の総合型健
康保険組合(被保険者要件は常時3,000人)があります。

独立採算の健保組合は法定給付以外に付加給付ができます。独自に保険料率
を定めたり使用者負担率を高くしたりすることもできます。健康診断の補助な
ど健康づくりのための事業にも積極的です。

会社が健保組合に入っていると、協会けんぽよりも保険料率が低く、特定健
康診査が受けられ、様々な独自の保健サービスがあるなどメリットがありまし
た。

■ 10年でひとり10万円の負担増 ────────────────────────

健康保険組合連合会が、加入している健康保険組合の予算状況を発表しました。
(4月23日)

2018年度の赤字組合は全組合の6割を超える見込みで、平均保険料率は過去最
高の9.215%となり、11年連続して上昇しました。保険料率が協会けんぽの平
均を上回る10%以上の組合は313組合です。

健保組合に入っている会社は保険料率が安いとはいえなくなっています。

被保険者一人あたりの保険料負担額は最近の10年間で約10万円以上増加しまし
た。2018年度に保険料率を引き上げる予定の健保組合は172、財政は厳しいの
です。

■ 2018年の組合健保の収支 ────────────────────────

健康保険組に加入している被保険者の平均標準報酬月額はここ10年ほぼ横ばい、
平均標準賞与額は9割になっています。

一方、医療費や傷病手当金などの法定給付費は10年前に比して22%の増加、高
齢者医療にあてられる拠出金は42%の増加となっています。

健保組合全体の保険料収入の4割以上が高齢者医療への拠出金に充てられてい
て、赤字の大きな原因です。同割合が50%以上の組合は331組合にもなってい
ます。保険料の半分以上が加入者以外の費用に使われているのですから、もは
や「保険」とはいえないような状況といえます。

2018度が被保険者数が増加、保険料収入も増加しますが、保険給付費の増加と
前年同様の拠出金負担で、健康保険組合全体の収支は1,381億円の赤字予想で
す。(2017年は3,024億円の赤字)

■ 健保の財政悪化を進めないために ────────────────────────

高齢者医療制度が創設されてから、赤字となる健保組合は増加し続けています。
多くの健保組合では、保有資産の売却を進め、保養所を減らしたり、保健会館
を減らしたりまた、人間ドックの受診料補助を減らすなども行われています。
健全化のために保険料率を引き上げても根本的な対策にはなりません。

現在、組合員が納める保険料の約4割が高齢者の医療費に使われていますが、
今後、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年にはこの割合が全組合平均でも
5割を超えるとの予想です。

■ 2割の健保組合が解散予備軍 ────────────────────────

協会けんぽと同じ保険料率で、独自の給付(付加給付)もなく、黒字化のめど
も立たないのであれば、加入しているメリットはありません。

組合が解散するには厚労大臣の認可が必要ですが、解散により消滅した組合の
権利義務は協会けんぽが継承することになっています。

西濃運輸健保組合、京樽の健保組合は2008年に解散し協会けんぽに移行しまし
た。翌年には新潟運輸健保組合が解散しました。

2007年に1,518あった健保組合は、2018年には1,389に減少、さらに減少する見
込みです。

■ 協会けんぽの拠出金割合 ────────────────────────

政府管掌の協会けんぽでは、健康保険料の約37%が後期高齢者医療にあてられ
ています。
新潟県の場合、健康保険料率9.63%で、そのうち3.61%が後期高齢者を支援す
るための特定保険料率です。

協会けんぽは健保組合に比べ、1人当たり医療費は高く、平均所得は低いとい
う現状でありながら、高齢者医療への負担は健保組合のほうが格段に高くなっ
ています。

それは協会けんぽに年間1兆円規模の税金が投入されているためです。協会け
んぽに対して行われる保険給付や後期高齢者支援金などの国庫補助は健保組合
に対して行われていません。

■ 解散が増えると ────────────────────────

50万人の加入者を抱える全国最大規模の人材派遣健保や、16万人の日生協健保
が解散の検討に入っていると伝えられました。
健保の解散が増えると協会けんぽの加入者が増え税金の投入が増えることにな
ります。健保組合解散は、国費負担を増やすことなのです。

多くの健保組合で充実している人間ドックや特定健診が、協会けんぽに変わる
と実施されにくくなるという心配もあります。

■ 健保組合解散は国民の問題 ──────────────────────

健保組合に加入していない人は、「私には関係ない。健保組合のことだから」
と考えがちではないでしょうか。

健保連の関係者は次のように言っています。「高齢者医療の抜本的な対策が必
要。負担見直しは喫緊の課題。今手を打たなければ、国民皆保険は崩壊する」