年休を与えないと企業に罰金

★★ 年休を与えないと企業に罰金!? ★★

年次有給休暇は労働者から請求があったときに与えなければならないものです
が、来年4月から全企業で最低5日取得させることが義務付けられます。

労基法の改正ですから、違反すると30万円以下の罰金が科されます。

■ 重要ポイント ────────────────────────

来年度から年次有給休暇の5日付与が義務となります。今から少しずつ取得し
やすい環境づくりをはじめましょう。

■ 年休をめぐる現状 ────────────────────────

国は年次有給休暇の取得率を2020年には70%にする目標を掲げています。健康
で豊かな生活のための時間が確保できる社会とするためです。

年次有給休暇の取得率は近年5割を下回る水準で推移していて、平成28年でも
49.4%でした。

正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得していないこと、年次有給休暇を
取得していない労働者に長時間労働者の比率が高いことを踏まえ、年次有給休
暇の取得を確実に進めるため、法律が改正されます。

■ 年次有給休暇の法改正 ────────────────────────

「年次有給休暇が10日ある労働者については、基準日から1年以内の期間に、
労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」

これが新しくなる年次有給休暇の法律です。(労働基準法第39条第7項)

4月1日入社のフルタイム勤務者であれば、10月1日から翌年の9月30日までに10
日付与されますが、そのうちの5日は確実に取得させろ、ということになりま
す。

年次有給休暇は週所定労働日数が4日以下の労働者にも比例的に付与されます。
週4日勤務であれば、3年6か月継続勤務すると10日の年休が付与されますが、
この方も対象となります。
「時季」とは「季節」と「具体的時期」の双方を含む概念であるとされてい
ます。条文で「時季」となっていて、「時期」ではありません。

■ 年休所得率が低い理由 ────────────────────────

年次有給休暇は「年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他
不利益な取扱いをしないようにしなければならない」(労基法第136条)とな
っている、労働者の大切な権利です。

けれども、「周囲に迷惑がかかるから」「後で多忙になるから」「職場の雰囲
気が取得しづらいから」などの理由で取得が進んでいません。
時給のパートタイマーには年休の取得を奨励していない会社も少なくないよう
です。

年休をとる習慣がなかった管理職やパートタイマーも含め、今から年休付与が
義務になる準備を進める必要があります。

■ 年休付与の方法 ────────────────────────

使用者は、年休の時季指定を行うに当たって、年休権を有する労働者から時季
に関する意見を聴くこと、意思を尊重することが求められます。

年休付与の方法としては

(1)労働者本人から時季を指定してもらう

(2)労働者本人の希望を聞いたうえで使用者が時季を指定する

(3)労使協定を締結して計画的付与を行う

などですが、5日確実に付与しなければなりません。

■ 労使協定による付与とは ──────────────────────

使用者は、過半数労働組合、それがない場合は労働者の過半数代表者との労使
協定により、年休を与える時季について定めることによって年次有給休暇を付
与することができます。年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分について計
画的に年休日を労使により特定できるとしています。(労基法第39条第6項)

この労使協定による計画年休制度は、有給休暇の取得を高める目的で昭和62年
の労基法改正の際に導入されたものです。

■ 計画年休のタイプ ────────────────────────

計画年休には

(1)全社的な一斉休暇

(2)グループ・部門別の交替制休暇

(3)計画による個人別休暇

が考えられます。

3つのタイプの計画年休を組み合わせて5日を確実に取得してもらうのがよいの
ではないでしょうか。

計画的付与制度は約2割の会社で実施されています。

■ 年次有給休暇の単位 ────────────────────────

年次有給休暇の単位は1日が原則です。

使用者が労働者の請求に対して半日単位で付与することは従来から認められて
いました。また、平成20年の労基法改正(平成22年4月1日施行)で、労使協定
の定めにより時間単位での年次有給休暇の付与が認められるようになりました。

年休の付与については1日単位でなくてよいので、半日や時間単位も検討され
てよいと思います。

■ 基準日を統一するのがよいのか ─────────────────────

従業員の勤続年数が短い会社では入社時から年休を付与することや、4月1日に
一斉に年休を付与することはおススメしていませんでした。

一斉付与の場合は、法律の付与日数を上回らなければなりません。4月1日一斉
付与にすると3月31日に入社した人も翌日の4月1日には6か月勤務したものとし
て4月1日から翌年の3月31日までに10日を付与することになります。

年休の強制取得制度を考えると、個人別の管理は非常に煩雑なので、斉一的取
扱い(年休付与の基準日を設定する)ほうがよいかもしれません。そうであれ
ば就業規則の見直しが必要になります。基準日は年2回の設定(4月1日と10月1
日など)がよいでしょう。

■ 年次有給休暇管理簿の作成  ─────────────────────

年休の付与を確実にするため、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかに
した書類(年次有給休暇管理簿)を作成しなければならなくなります。また、
使用者は年次有給休暇管理簿を労働者名簿及び賃金台帳と合わせて調製するこ
とができることとすることが強制取得に合わせ求められることになります。

■ 罰則 ────────────────────────

年次有給休暇の5日の付与を行わない場合(会社が指定したにもかかわらず本
人が取得しなかった場合も含む)は、30万円以下の罰金が科せられます。
(労基法第120条)

■ 今からはじめよう ────────────────────────

「8月11日から10月10日までの間に2日の年次有給休暇を取得しよう」

たとえばこのように期間を定め、全員の名前と取得希望日をきちんと書いても
らって一覧表にしたら、休暇取得がすすみ、効率的に業務をする社員が増える
のではないでしょうか。