期間を定めた雇用契約を結ぶとき

★★ 期間を定めた労働契約を結ぶとき ★★

「労働契約の締結に際し、労働者に対して、期間の定めのある労働契約を締
結し更新する場合の基準に関する事項を明示していないこと(労基法第15条第
1項)」

アルバイトの雇用契約書を労働基準監督署の調査時にチェックされ、このよ
うな違反があると是正勧告書を渡されました。

期間の定めのある労働契約を結ぶときには、正社員との契約を結ぶ時以上に
気をつけなければならないことがあります。

■ 重要ポイント ────────────────────────

有期労働契約を結ぶときには、契約を更新する場合の基準に関する事項を記載
しなければなりません。
有期労働契約が繰り返されると、無期とみなされたり、無期転換を申し込まれ
たりすることもあります。

■ 労働条件の明示 ────────────────────────

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の
労働条件を明示しなければならない。」(労基法第15条)

労働条件の重要なものとして一番に賃金、二番目に労働時間があげられてい
ます。

法文は続けて「この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚
生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示し
なければならない。」とあり、これを受けて施行規則第5条が期間の定めのあ
る労働契約を更新する場合の基準を記載するように求めています。

■ 更新の基準 ────────────────────────

更新の基準の内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自
らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものである
ことが求められています。

更新の有無とは

A  自動的に更新する

B 更新する場合があり得る

C 契約の更新はしない  等

更新の判断基準としては

A  契約期間満了時の業務量により判断する

B 労働者の勤務成績、態度により判断する

C 労働者の能力により判断する

D 会社の経営状況により判断する

E 従事している業務の進捗状況により判断する

等が考えられるとしています。(平成24.10.26 基発1026第3号)

■ 無期転換措置 ────────────────────────

労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始す
るもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日まで
に労働者から申し込みがあると、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の
定めの無い労働契約に転換されます。

有期契約の労働者を雇用している会社では、無期転換の申込み日がいつ発生す
るのか、無期転換後の処遇をどうするか、考えておく必要があります。

■ 短時間労働者で有期契約の場合 ──────────────────

パートタイム労働者が能力を発揮できるよう、雇用環境の整備をすすめるため
に「パートタイム労働法」(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法
律」があります。

パートタイム労働者とは「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される
通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」です。

パートタイム労働者については、次の事項も明示しなければなりません。
(パートタイム労働法第6条、施行規則第2条)

1 昇給の有無

2 退所手当の有無

3 賞与の有無

4 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

短時間労働者で有期契約であれば、通知する労働条件の項目が正社員以上にい
ろいろあるので、間違いのないようにしたいものです。

■ 期間の定めがあるという意味─────────────────────

期間の定めがある労働契約は、その契約期間中は、やむを得ない事由が無けれ
ば解消することはできません。契約期間中は手厚く保護されていますが、期間
の定めがある契約は、期間満了ともに終了するのが原則です。

■ 有期契約の繰り返しと退職についての職安の判断────────────

期間の定めがある契約が終了しての退職であっても、実際に雇用されていた期
間や、更新条項により、退職が「解雇等」として職安の手続き上労働者に有利
になることがあります。具体的には

(1)期間の定めのある労働契約の更新により、3年以上引き続き雇用される
に至った場合において当該労働契約が更新されないこととなった場合

(2)期間の定めのある労働契約(期間が1年未満の者に限る)の締結に際し
当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新
されないこととなった場合(1年以上引き続き同一の事業主に雇用されるに至
った場合を除く)

この場合、「解雇等」とされた会社は、助成金を受給していた場合に「解雇」
した扱いとなり不利になります。

■ 予定されている改正法────────────────────────

パートタイム労働法は改正され、平成32年4月1日(中小事業主は1年後)に施
行が予定されています。

名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
に改められ、短時間労働者と有期雇用労働者の双方を対象として、均等・均衡
ルール等を統一的に規定する法律となります。

■ 新法で求められる均等・均衡ルール──────────────────

同じ仕事をしていて責任の程度も同じなのに通常の労働者と有期契約労働者で
基本給や賞与などが違うということはないでしょうか。

新しい法律には非正規社員の不合理な待遇を禁止する、以下の条文があります。

「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待
遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間におい
て、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務
に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置
の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に
照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けて
はならない。」

また、待遇差についての説明義務も強化されます。