★★ 残業と離職理由 ★★
「退職した従業員の在職時の残業時間を知らせてほしいと職安から問い合わせ
が来ましたがなぜでしょう・・・」
事業主は従業員の退職時に職安に提出する離職票に賃金を記載します。労働
時間や残業時間を記載する必要はありません。なぜこのような問い合わせが来
たのでしょう?
■ 重要ポイント ────────────────────────
残業が多すぎたという理由で退職した場合、その人は「特定受給資格者」とな
り、雇用保険の求職者給付(求職活動をするときに生活の安定を図る目的で給
付されるもの。失業給付といわれる)で有利な取り扱いを受けることができます。
■ 特定受給資格者とは ────────────────────────
典型的な特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇により離職した人です。
再就職の準備をする時間的余裕がない状態で離職せざるを得なかった方です。
■ 「解雇」等にはブラックな労働実態が含まれる ─────────────
解雇は使用者から一方的に労働契約を解除されることなので、求職者給付で保
護されることはよく知られています。
ところが、特定受給資格者には「倒産・解雇」と同じ取り扱いが受けられる以下
のような「解雇」等があります。
(1)入社の時に約束した労働条件と実際が著しく違った
(2)賃金をちゃんと支払ってもらえなかった
(3)賃金が85%未満になった
(4)45時間を超える残業が3カ月続いた
(5)上司、同僚からのハラスメントがあった
(6)退職勧奨があった
これらの理由は、「それは労働者が辞めざるを得ないよね・・・」と解雇
に準ずる扱いとなります。
■ 「解雇」等には期間契約終了が含まれることも ──────────────
6か月の雇用契約や1年の雇用契約など期間を定めた雇用契約をすることに
何ら問題はありませんし、契約を更新することや契約期間が終わったので退職
となっても労働契約上の違法性はありません。
ところが雇用保険では
(1)期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに
至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職
した
(2)期間の定めのある労働契約(1年未満のものに限る)の締結に際し当該
契約が更新されることが明示された場合に当該労働契約が更新されないことと
なったことにより離職した者
これらも、「解雇」等扱いです。
契約期間があっても実際に3年雇用されると退職の時には「解雇」等となるの
で注意が必要です。
■ 有利な取り扱いとは ────────────────────────
失業給付を受けるためには被保険者期間が12カ月必要ですが、特定受給資格者
は6カ月と短縮されています。
給付制限期間(通常は3か月)がありません。
失業給付の所定給付日数が手厚くなることがあります。
■ 残業が多かったことの証明は ─────────────────────
退職した従業員が職安の手続きの時に「残業が多く退職せざるを得なかった」
と主張した場合、職安は会社にタイムカードか賃金台帳などの提示を求めます。
客観的な資料により事実関係が確認されると、「特定受給資格者」となります。
※ ここに挙げた以外にも特定受給資格者となる場合があります。
■ 助成金で不利になることも ──────────────────────
事業所の被保険者の一定割合以上の特定受給資格者を発生させた事業主には、
雇入れ関係の助成金が支給されません。