建設業の労災防止のしくみ

★★ 建設業の災害防止のしくみ ★★

工事現場では複数の事業者が関係して一つの建設工事が行われます。所属して
いる会社も職種も違う人が一つの建設工事にかかわります。

労働災害防止のためどのようなことをしなければならないのでしょう。

安全衛生法では建設業特有の業態を踏まえた、事故防止・安全体制が求められ
ています。

■ 重要ポイント ────────────────────────

複数の会社が関係する建設工事現場では、元請に災害防止の責任を負わせてい
る。

■ 安全衛生法の目的 ────────────────────────

労働安全衛生法(以下安衛法)は労働災害を防止し、快適な職場環境を整備す
るために事業者が実施すべきことを目的とする法律です。

1 労働災害防止のための危険防止基準の確立、事業場内での責任体制の明確
化、事業者の自主的活動の促進措置を講ずるなど、総合的・計画的な推進をす
ることで、職場の安全と健康を確保すること

2 快適な職場環境の形成を促進すること

を求めています。

労働基準法の一部が1972年(昭和47年)に分離独立してできました。

■ 事業者と事業場 ────────────────────────

安衛法は事業者と労働者が対象です。

事業者とは「事業を行う者で労働者を使用するもの」、労働者とは「その事業
に使用される者」のことです。

法人企業の場合には当該法人そのもの、個人企業の場合にはその個人事業主が
事業者になります。安衛法は、事業の安全衛生上の責任をはっきりさせるため
に、義務主体を「事業者」と定義しています。

建設工事現場では、労働者を使用している元請と下請それぞれが事業者です。

「使用者」とは「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関す
る事項について、事業主のために行為をするすべての者」(労働基準法第10
条)です。安衛法では責任の所在をはっきりさせるため、使用者ではなく事業
者を対象としています。

■ 会社が単位ではない ────────────────────────

事業場とは、安衛法や労基法の適用単位のことです。

通常は同じ場所にあれば1個の事業場です。

建設業の場合は店社(建設会社の本店、支店、営業所等)
と工事現場それぞれが事業場です。安衛法は事業場の業種と種類により規制が
異なり、安全管理者をはじめとする資格者の選任、労働基準監督署への報告や
届出などについて、事業場ごとに行わなければなりません。

例外的に、場所的に離れていても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能
力を考慮して1個の事業場としての独立性がない場合には直近上位の事業場と
一括して1個の事業場として扱われます。

■ 違反には両罰規定 ────────────────────────

安衛法に違反した場合、罰則が定められています。ルールを破った場合、懲役
や罰金が定められています。

労働基準法と違い、安衛法は事業者等の努力義務とされていて罰則がない規定
もあります。

違反が場あった場合、その行為をした人を処罰すると同時に事業者も罰せられ
ます。違反行為をした人と法人と両方に罰則が科せられる「両罰規定」になっ
ています。

■ 元請と下請 ────────────────────────

建設業では同じ場所に複数の事業者が混在しています。

事業者は、直接雇用している労働者に対して安衛法上の責任を負っていますが、
他の事業者の雇用する労働者に対する責任を負いません。混在作業における労
働災害防止のため、安衛法は、元請事業者に一定の事項を実施させることとし
ています。

■ 元請がしなければならないこと ───────────────────

元請(元方事業者)は関係請負人及び関係請負人の労働者(いわゆる下請)が
安衛法等の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければなりません。

混在作業の労災防止のため、協議組織を設置し、定期的な会議を開催すること、
関係請負人相互の連絡を調整し、作業場所の巡視もしなければなりません。
元請は下請等関係委請負人の労働者に対する労働災害防止について責任を負っ
ているのです。

■ 工事現場の労災保険 ────────────────────────

建設業が数次の請負によって行われる場合については、災害補償についてその
元請負人が使用者とみなされ、工事現場全体として元請が保険を掛けます。
元請・下請が混在する建設事業において、労災保険上その事業を一の事業とみ
なし、元請負人のみがその事業の事業主とされるのです。

■ 安全衛生管理体制 ────────────────────────

安衛法は安全衛生管理体制を「制度化」し、事業者の責任を明確にして、指揮
命令系統を整理・統治させて安全衛生管理体制を構築させることとしました。

■ 安衛法上重要な責任者・資格者 ───────────────────

(1)総括安全衛生管理者

常時使用する労働者の数が100人以上の建設現場では、総括安全衛生管理者
を選任しなければなりません。

総括安全衛生管理者には事業場においてその事業を統括管理する者をあてます。
選任後は所轄労働基準監督署に選任報告書を提出しなければなりません。

(2)安全管理者・衛生管理者

建設業の場合、安全管理者は労働者数が50人以上の事業場で選任しなければな
りません。安全に係る技術的事項を管理する者なので、資格が必要です。

衛生管理者は労働者数が50人以上の事業場で選任しなければならず、衛生管理
者免許が必要です。

安全管理者が安全に関する技術的事項を、衛生管理者が衛生に関する事項を管
理するルールで、それぞれ選任報告書を監督署に提出しなければなりません。

(3)安全衛生推進者

常時使用する労働者が10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者を選任
します。

安全衛生推進者の資格は実務経験や養成講習を修了するともらえます。選任報
告義務はありません。

(4)作業主任者

一定の危険や有害な作業を行うについては、専門技術を持っている「作業主任
者」の選任が必要です。

たとえば、高さ5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊の
作業の時には、「コンクリート造の工作物の解体等作業主任者」を選任します。

作業主任者技能講習を修了して作業主任者となることができます。

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