産業医の役割

★★ 産業医の役割 ★★

従業員が増え50人以上になると「産業医」を選任しなければなりません。

あまり身近ではない「産業医」の役割を考えます。

■ 重要ポイント ────────────────────────

産業医は、医学に関する専門知識をもって労働者が健康で快適な環境で仕事が
できるよう、指導・助言をする重要な役目を担っています。

働き方改革関連法の改正で産業医の役割も強化されました。

■ 産業医を選任しなければならない事業場 ────────────────

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、少なくとも1人の産業医を選任
しなければなりません。

50人には、パートタイマー等の臨時的労働者や派遣労働者も入ります。

事業場とは一つの場所のことで、会社規模ではありません。

産業医を選任したとき、変更した時は労働基準監督署に届け出が必要です。

■ 産業医はどのような医師か ──────────────────────

産業医は、厚生労働大臣が定める産業医学の研修を修了するなど一定の要件を
満たした医師です。

■ 産業医の職務 ────────────────────────

産業医は以下のようなことを行います。

(1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持
するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関す
ること

(2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に
関すること

(3)労働衛生教育に関すること

(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること

産業医は少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、健康障害の防止に努めるもの
とされています。産業医は衛生委員会の委員にもなります。

■ 産業医に長時間労働者の情報を提供する ────────────────

法改正により事業者は、次の情報を産業医に提供しなければならなくなっ
ています。

(1)健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックに
基づく面接指導実施後に講じた措置等の情報

(2)時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名・当該
労働者にかかる当該超えた時間に関する情報

(3)労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切
に行うために必要と認めるもの

■ 産業医の勧告を受けたとき ──────────────────────

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があるときは、勧告をすることが
できますが、事業者はその勧告を尊重しなければなりません。

事業者は、産業医の勧告を受けたときは、遅滞なく勧告の内容、勧告を踏まえ
て講じた措置等の内容を衛生委員会等に報告しなければなりません。

衛生委員会等の意見・当該意見を踏まえて講じた措置の内容は議事録等に記
録し、3年間保存しなければなりません。

衛生委員会に報告されることで、産業医の勧告が労働者の健康確保に実効あ
るものになることが期待されます。

■ 産業医が労働者の健康相談に対応するために───────────────

労働者が産業医に安心して健康相談を受けられるような体制づくりが求められ
ています。
事業者は、産業医による健康相談の申し出の方法(健康相談の日時・場所等を
含む。)、産業医の業務の内容、事業場における労働者の心身の状態に関する
情報の取り扱い方法を労働者に周知させる必要があります。

■ 産業医の業務内容の労働者への周知 ───────────────────

産業医を選任した事業者は、産業医の業務の具体的な内容、産業医に対する
健康相談の申し出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取
り扱いの方法を次のいずれかの方法で労働者に周知させなければなりません。

(ア)常時各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付けること

(イ)書面を労働者に交付すること

(ウ)磁気テープ、磁気ディスクその他これに準ずる物に記録し、かつ、各作
業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

■ 健康情報の収集と産業医・事業者 ────────────────────

労働者の健康管理等を行うための情報収集については注意が必要です。

「労働者が産業医に提供した情報の内容等が当該労働者の同意なしに、事業者、
人事担当者、上司等に伝達されることは、適正な情報の取扱い等が阻害される
こととなる。
そのため、産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を収集し
ようとする際には、当該情報の収集対象となった労働者に人事上の評価・処遇
等において、事業者が不利益を生じさせないようにしなければならない。
また、事業者は、産業医が当該情報を収集する際の当該情報の具体的な取扱
いについてあらかじめ、衛生委員会等において審議し、決定しておくことが望
ましい。」
厚労省が出している Q&A  問2に対する答2

■ 産業医が求める健康情報とは ───────────────────────

事業者は産業医にどのような情報を提供して健康管理に役立てればいいのでし
ょう。
「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行
うために必要と認めるもの」には、①労働者の作業環境、②労働時間、③作業
態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などが含まれる。

Q&A  問6に対する答6

■ 産業医のいない50人未満の事業所の事業主がすることは ───────────

産業医の選任が義務付けられていない事業場の事業者もこの法改正と無縁では
ありません。

50人未満の事業場でも、医師又は保健師に対して、時間外・休日労働時間が
1月当たり80時間を超えた労働者等については情報提供するように努めなけれ
ばなりません。(努力義務)

健康管理を行うのに必要な知識を有する医師又は保健師について事業者は、
医師らの業務の内容、健康相談の申し出の方法等を労働者に周知するよう努め
なければなりません。(努力義務)

■ 産業医のいる会社の労働者はどれくらい──────────────────

常時50人以上の労働者を使用する事業場の労働者は、労働者全体の約4割
といわれています。

各都道府県に産業保健総合支援センターが設置されていて、健康相談や労働
者の健康管理を行う医師のアドバイスが受けられるようになっています。