6月のニュースレターをUPしました

◆正社員になりたいですか?◆

大企業を中心に6月1日から新卒者の面接選考が正式に解禁となります。来春の学校卒業予定者は、大企業の正社員になることを目指して、就職活動をするのでしょうか。

日本のような「正社員」は他の国にあまり例がないといわれています。

どんな特徴があるのでしょう。

重要ポイント

「無限定」で働く正社員と、育児・介護を優先して働きたいというような「限定」のあるパートタイマーの就業規則だけでは、多様な就業形態を求められた場合に対応できなくなります。

正社員になりたかったという女性

「正社員になりたかった!」若い女性の事務職の方がおっしゃっていました。新卒で正規雇用されないと、とても不利だからと。正社員なら福利厚生が手厚いし、長期に安定して働けると思うから。
正社員だから高賃金とは限りません。正社員だから必ず昇給があって、必ず賞与が支給されるわけではありません。必ず退職金があるわけでもありません。
また、一般的には正社員の雇用は安定していますが、グローバルな競争の中で、老舗の大手企業の「正社員」でも、雇用安定は絶対ではないでしょう。でも「正社員!?」

正社員はメンバーシップ契約

新卒で正社員採用されることは、企業と「メンバーシップ契約」をすることだと、日本の雇用の特徴を言い表す説があります。(「日本の雇用と労働法」濱口桂一郎、日経文庫)
日本型雇用システムでは、企業の中の労働を職務ごとに切り出さずに一括して雇用契約の目的にします。労働者は企業の中のすべての労働に従事する義務がありますし、使用者はそれを要求する権利を持ちます。
雇用契約それ自体の中に具体的な職務は定められておらず、命令によってその都度職務が書き込まれるべき空白の石版であるという点が、日本型雇用システムの最も重要な本質です。こういう雇用契約は、一種の地位設定契約あるいはメンバーシップ契約と考えることができます。
メンバーシップへの入り口は採用で、出口が退職です。採用における新規学卒者定期採用制と退職における定年制が日本の特徴となっています。

メンバーシップ契約の特徴

正社員である以上、企業が時間外・休日労働を命令すればそれに従う義務があります。
正社員であれば転勤に応じることも当然とみなされ、それに伴う家庭生活上の不利益は甘受することが期待されています。
一方、正社員と全く逆で、企業へのメンバーシップを有せずに、具体的な職務に基づいて採用され、長期雇用慣行もなく、賃金は企業外部で決定される膨大な数の低賃金の非正規労働者が存在しています。(以上「日本の雇用と労働法」より)

正社員の特徴

正社員の特徴は次のように説明されることもあります。(以下は「非正規社員の法律実務」 石嵜信憲編署 中央経済社)
(1)正社員の呼称で雇用される
(2)基幹的・恒常的業務がある企業に直接雇用された者である
(3)契約期間の定めがない
(4)フルタイム労働する
(5)一定の待遇保障と継続的な教育研修を受ける

非正規社員の特徴

非正規社員は上記正社員の5つの特徴のうちどれかを欠くことになります。
短時間労働者であるパートタイマーは、(4)に欠けます。
有期契約労働者は(3)に欠けます。
派遣労働者は直接雇用という雇用ではなく、(2)に欠けるので、非正規と考えられます。

実態調査で正社員とは

厚労省は昭和62年から3~4年ごとに雇用の構造に関する実態調査を実施、直近では平成27年に平成26年度の調査をしています。(平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況、平成27年11月4日)
「雇用されている労働者で雇用期間の定めの無い者のうち、他企業への出向者などを除いたいわゆる正社員をいう。」これが調査における正社員の定義です。
「雇用期間の定めがなく、いわゆる正社員」となっていることに、定義づけのむずかしさを感じます。

短時間正社員で募集したい

典型的な正社員の募集をしても応募者がいないので、短時間正社員で募集をしたいという希望をサービス業の人事担当者からお聞きしました。正社員という言葉には、魅力があるのでしょう。
キャリアアップ助成金は非正規雇用の労働者の正社員化や人材育成の取り組みを助成するものですが、そこでは、多様な正社員とし①勤務地限定正社員、②職務限定正社員、③短時間正社員の3種類をあげています。

多様な正社員とは

多様な正社員の共通点は以下です。
(1)期間の定めの無い労働契約を締結していること
(2)派遣労働者でないこと
(3)賃金の算定方法及び支給形態、賞与、退職金、休日、定期的な昇給や昇格の有無等の労働条件について、正規雇用労働者の正社員待遇が適用されている労働者であること
(短時間正社員については時間当たりの基本給、賞与、退職金等の労働条件が正社員と同等であること)
勤務地限定正社員は勤務地が限定されている社員、職務限定正社員は職務が限定されている社員、短時間正社員は所定労働時間が日、週、月または年といった単位で短縮されている社員としています。

キャリアアップ助成金にみる正社員化コースと多様な正社員

平成27年度のキャリアアップ助成金は正規雇用等転換コースと多様な正社員コースが分かれていて、正規雇用にして受給できる金額は、多様な正社員にするより高額でした。
平成29年度は正社員化コースという名称になり、正規には多様な正社員(勤務地・職種限定正社員、短時間正社員)を含むとなりました。限定社員でも無限定でも助成金額は同じになっているのです。多様な正社員化が求められているといえるでしょう。

正社員かパートかだけではなく

正社員であっても無限定ではない雇用がこれから増えていくことでしょう。残業ができない正社員も受け入れていく必要があるかもしれません。
有期契約であっても、今後は無期転換が義務化されます。
正社員の中にも無限定正社員とそうでない正社員が、非正規社員には有期パート・無期パート、有期フルタイマー・無期フルタイマーなど、複雑な雇用形態を管理していくことが求められます。
何がどのように違うのか、雇用形態に応じた就業規則の整備も必要となります。

そ の 他 の 記 事

 ト ピ ッ ク ス  年金の受給資格期間が10年になります   平成29年8月から

年金を受け取るには25年の受給資格期間が必要でしたが、平成29年8月1日から10年加入に短縮されます。
10年とは次の期間の合計です。
①国民年金加入期間 ②厚生年金加入期間 ③共済組合加入期間 ④カラ期間
カラ期間とは、加入期間には加えるが、年金額の計算に入れない期間のこと。
厚生年金や共済組合加入者の配偶者で昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの間、国民年金に任意加入しなかった20歳から59歳までの期間や、平成3年3月以前の学生であった期間などです。
期間短縮で受給できるようになった年金の支払い月は平成29年10月からになります。

 労務のことば  ~ 採用内定 ~

採用試験の受験は労働者による契約の申込み、採用内定通知の発信は契約の承諾と考えられています。内定は労働契約が成立したという意味を持ちます。
「採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはない」とした最高裁判例があります。

【スタッフからひとこと】 育児休業中に退職する時、育児休業給付金は、いつまで受給できますか?

育児休業給付金は、産休終了日の翌日より1か月ごとの期間に区切って支給されます。この期間を支給単位期間といいます。
例えば、4月23日から5月22日が支給単位期間で4月30日に退職した場合は、この支給単位期間は、給付金が支給されません。しかし、5月22日に退職した場合は、支給されます。
退職の場合、育児休業給付金は、日割りできないので、支給単位期間在職していなければ受給できません。

【 時間外労働トラブルの防ぎ方 】 セミナー 業務日誌 5月

外勤の営業職などでは正確に労働時間を把握することはなかなか難しいですが、「本人に任せて
いる」は通用しなくなっています。そんな中、労務管理に前向きな経営者、経営幹部の方にお集まりいただき、【時間外労働トラブルの防ぎ方】をテーマにセミナーを開催しました。
セミナーの途中にたびたびよい質問をいただいたおかげで、受講者の皆様とコミュニケーションをとりながら話を進めることができました。休憩中もセミナー後も質問がやむことなく続きました。受講後の感想に、「楽しい研修でした」を複数頂きまし
た。そのほか「大変ためになりました。中途の質問で今やっている残業計算も間違いでなかったことが理解できました。就業規則、36協定も再度確認して万全を期したいです。参加してよかったです。建築設備業、総務部長様」など、励みになる感想をたくさんいただきました。